第38期第2回研究会「放送の理念と実態はなぜ一致しないのか──樋口喜昭著『日本ローカル放送史:「放送のローカリティ」の理念と現実』(2021年青弓社)書評会」(放送研究部会)

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■日 時:2022年1月22日(土) 午後2時から4時半まで

■方 法:ZOOMを用いたオンライン研究会

■書評者:橋本純次(社会情報大学院大学)、脇浜紀子(京都産業大学)

■応答者:樋口喜昭(東海大学)

■司 会:太田美奈子(新潟大学)

■企画趣旨

 テレビやラジオにおいて、地域性や各地の文化・風土を重視するあり方を指す「放送のローカリティ」は、放送の根幹を成す理念として参照されてきた。しかし、中央集権的な放送ネットワークやローカル番組の少なさが示すように、その実態は乖離し続けている。一方で、インターネットによるコミュニケーション空間が拡大し、映像、音声、テキストが場所や時間を超えて流通する今日、実空間と結びついた「放送のローカリティ」の理念を捉え直すことは、これからのメディアと地域のあり方を模索する上で必要な作業ではないだろうか。

 本書評会では、樋口喜昭著『日本ローカル放送史:「放送のローカリティ」の理念と現実』(青弓社、2021)を取り上げる。本書は、戦前のラジオ放送から戦後のテレビの登場、ローカルテレビ局の開局と系列化、BSデジタル放送の開始、地上デジタル放送の移行という歴史をローカル放送の制度・組織・番組の側面から検証し、放送のローカリティの理念と実態が乖離してきた実情を明らかにした。そこで、本書を頼りに、ローカルな視点から放送史を改めて振り返り、これからの「放送のローカリティ」について議論を深めていきたい。

 本書評会は、書評者に、放送政策や民放地方テレビ局に造詣の深い橋本純次先生(社会情報大学院大学)と、地域メディア論をご専門とし、ローカル局での実務経験を持つ脇浜紀子先生(京都産業大学)をお迎えする。ローカル放送に精通する両者と著者、そして出席者をまじえ、知見を共有し、ローカリティをめぐる放送の未来を描く場となれば幸いである。