2019 年 8 月 24 日(土)/韓国・ソウル市
グローバル化とともにデジタル技術による融合・複合化の動向もメディア界に激しい競争をもたらしている。未曾有の影響は、社会、政治、文化など諸側面に及んでおり、メディアおよびジャーナリズムの概念や役割に関する根本的価値までを揺るがしている。しかし、こうした変化、すなわちメディアの商業化や産業的な競争および再編の動きにもかかわらず、メディア・ジャーナリズムに与えられてきた社会的公共資源という公共性の本質、その核心的な価値は急激な変化の中でこそ、より重要視されるべきである。こうした認識の下、日本マス・コミュニケーション学会と韓国言論学会が共同主催する本国際シンポジウムでは、メディア界における急激な変化の流れの中で歪められている社会問題や現実を批判的に分析することによって、メディアの公共性を再認識することを目的としたい。
メインテーマを「より良い未来のためのメディアの公共性」とし、具体的には、 近年ますますその重要性が高まっている「環境問題」、「社会の多文化化」、そして「メディア・ジャーナリズムの倫理」について取り上げることで、改めて「メディアの公共性」を議論する場を提案する。
今回のシンポジウムでは、両学会間の学術交流をより活性化するために、上記のテーマ・セッションとは別に自由テーマの「一般セッション」を設けることにより、これまでよりも多くの学会員による研究発表が可能になりました。奮って、ご参加のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
プログラム
日時:2019 年 8 月 24 日(土)
会場:漢陽大学校白南学術情報館 6 階国際会議室(韓国・ソウル市)
09:00~09:30 受付
09:30~10:00 開会
総合司会 文嬿珠(韓国言論学会国際理事、韓国放送通信審議委員会)
開会の辞 両学会長のご挨拶
李在鎭 (韓国言論学会会長、漢陽大学)
吉見俊哉(日本マス・コミュニケーション学会会長、東京大学)
10:00~11:00 共同研究セッション
新聞が抱える諸問題:収益創出とジャーナリズムの役割の共存の道を求めて
呉杕泳(嘉泉大学)尹熙閣(釜山大学)酒井信(文教大学)
地域メディアとスポーツ――日韓比較研究
松実明(中央学院大学)鈴木雄雅(上智大学)李宰豪(ウィング)
崔洛辰(済洲大学) 鄭溶俊(全北大学)
11:00~12:20 テーマ・セッション
司会 金正鐸(成均館大学)
ニュース・ビックデータ分析を通してみる PM2.5 報道の中国化と脱中国化
朴大珉(韓国言論振興財団)
公共メディアにおける「ケア」の認識とジャーナリズム倫理:日韓のキリスト教をめぐる宗教観と報道の関係からの考察 アルン・デゾーザ(上智大学大学院) 引地達也(上智大学大学院)
討論者:鈴木弘貴(聖心女子大学) 趙聖東(韓国放送協会)
12:20~14:00 昼食
14:00~15:20 一般セッションⅠ
司会 姜明求(ソウル大学)
多様性の時代、メディアの変化:メディア参加と住民権論議を中心に 鄭義徹(尚志大学)
米国メディアとの協働による市民メディア運営と、国際スポーツ報道に関する大学ジャーナリズム教育実践の一例 小田光康(明治大学)
討論者:崔銀姫(佛教大学) 金秀貞(忠南大学)
15:20~15:40 休憩
15:40~17:00 一般セッションⅡ
司会 元庸鎭 (西江大学)
記憶のデジタル・アーカイブ化に関する批判的考察 佐藤信吾(慶應義塾大学大学院)
1919-1924 における柳宗悦の言論活動とメディアの役割 中江桂子(明治大学)
韓国の「反日」/「反日」の日本――アンチ日本をめぐるメディア言説の比較分析――
倉橋耕平・趙相宇(立命館大学・京都大学大学院)
討論者:玄武岩(北海道大学) 金渭根(韓国言論振興財団)
17:00~17:20 閉会
総合司会 文嬿珠(韓国言論学会国際理事、韓国放送通信審議委員会)
閉会の辞 金春植(韓国言論学会次期会長、韓国外国語大学)
18:00~20:00 懇親会(バス移動)
空港から推奨ホテル/推奨ホテルから会場までのご案内
1.空港から推奨ホテルまでのご案内
コリアナ・ホテル (Koreana Hotel)
住 所:ソウル市 中区 世宗大路 135(서울시 중구 세종대로 135)
アドレス:http://www.koreanahotel.com(日本語サイトあり)
交 通:
1)仁川国際空港からのアクセス
・第 1 ターミナル:リムジン・バス 6701 番乗車 → コリアナ・ホテル前下車
・第 2 ターミナル:同上
※第 1 ターミナルの場合は 22 時 50 分、第 2 ターミナルの場合は 23 時 10 分が最終
※所要時間:約 1 時間 15 分、料金:16000 ウォン(一人当たり)
2)金浦国際空港からのアクセス
・地下鉄 5 号線 金浦空港駅で下り方面(君子駅、往十里駅方面)乗車 → 光化門駅下車
→ 6 番出入口から観光案内所方面に徒歩約 5 分、右側にホテルあり
※平日の終電:(君子駅行き)23 時 59 分
※所要時間:徒歩含めて約 45 分、料金:カード=1,450 ウォン or 現金=1,550 ウォン
2.推奨ホテルから会場までのご案内
・地下鉄 2 号線 市庁駅(City Hall)で聖水駅方面に乗車 → 漢陽大駅で下車
※所要時間:ホテルから 2 号線市庁駅まで徒歩約 10 分+乗車時間が約 14 分+漢陽大駅 2 番出口から徒歩約 5 分=約 30 分。ただ、電車の待ち時間が長くなる可能性が高いので、余裕を持つこと。
※料金:カード=1,250 ウォン、現金=1,350 ウォン
ウェルカム・レセプションのご案内
第 25 回日韓国際シンポジウム関連のイベントとして、下記の日時・場所でウェルカム・レセプションが開かれる予定です。予約制ですので、ご参加を希望される会員は、下記までにご一報をお願いいたします。招待人数に限りがありますので、多数の参加希望の場合、先着順とさせて頂きます。
・連絡先:黄盛彬(実行委員長)seongbin@rikkyo.ac.jp
レセプション会場
お 店:タルケビ(달개비, dalgaebi)
日 時:8 月 23 日(金)19 時 30 分〜
住 所:ソウル市中区世宗大路 19 ギル 16(貞洞)( 서울시 중구 세종대로 19 길 16(정동) )
http://dalgaebi.co.kr(ホームページ、日本語サイトなし)
電話番号:+82-2-765-2035、2068(国際電話)
02-765-2035、2068 (韓国内電話)
第25回日韓シンポジウム終わる
記録執筆者:黄盛彬(立教大学)
参加者数 :25人(本学会からの参加者)
報 告:
第25回を迎えた今年の日韓国際シンポジウムは、「より良い未来のためのメディアの公共性 – 環境報道、多文化化、メディア・ジャーナリズム倫理」をテーマとして、2019年 8 月 24 日、漢陽大学(韓国・ソウル市)にて開催された。日韓共同研究の報告2件、2 つのセッション(テーマセッションと一般セッション)で計7件の研究報告があった。日韓の両学会から、司会、討論者を含めて計26名が登壇し、活発な議論が展開された。本学会からは、吉見俊哉会長、津田正太郎総務担当理事、国際委員会委員、報告者、討論者、一般会員を合わせて、25名が参加した。なお、非会員でありながら聴講の希望を申し出た大学生3名も、シンポジウム組織委員会の了承をえて、聴講者として参加した。
日韓国際シンポジウムは、1991年に第1回(東京)が開催され、四半世紀以上に渡って続いてきているが、両学会が隔年ごとにホストになる方式を基本形としてきた。まず、ホストとなる学会からテーマの提案があり、相互協議の下でテーマを決定し、両学会の会員に告知し発表者を募集する形である。今回の開催にあたっては、学術交流をより活性化するために、テーマセッションとは別に自由テーマの「一般セッション」を設けることとなった。その結果、本学会の会員からは、テーマセッション1件、一般セッション5件の応募があった。従来に比べて多くの発表申請があったことを積極的に捉え、ホスト側の韓国言論学会とも協議を行った結果、できるだけ多くの発表の機会を確保する方向で準備することとなった。それを受けて、実行委員会として、応募全件に対し、採択の通知とともに締切日までに発表原稿の提出を求めた。その結果、本学会からは、テーマセッション1件、一般セッション4件の研究発表を行うこととなった。2014年の第20回シンポジウムの際に提案され、2015年の第21回のシンポジウム(韓国・済州大学)より取り組まれていた「日韓共同研究」セッションでは、二つの「共同研究」の発表が行われた。日韓の両学会の会員により複数年に渡って取り組まれてきた研究成果であり、やや発表時間が逼迫していた感があったが、今後の両学会の学会大会や学会誌などでの成果発表が望まれる。
本シンポジウムでは、冒頭に両学会の会長による挨拶が行われるが、本学会の吉見会長のスピーチは、全て韓国語で行われ、会場の参加者を驚かせた。滑らかな言葉ではなかったので、途中で日本語に切り替わるのかと思っていたら、最後まで韓国語で貫かれた。渡航中の飛行機の中で、また空港に向かうタクシーの中でも練習を重ねたということであった。四半世紀以上に渡って交流が続いていながら、両側の母国語による同時通訳というコミュニケーションのあり方に、新たな可能性を示唆する意味もあったように思われた。本学会からのテーマセッション発表は、アルン・デゾーザー会員と引地達也会員による共同発表であったが、発表の際に用いたスライドは日本語と英語で作成されていて、報告は英語を基本として行われた。事前に日韓の同時通訳が提供されていることは周知済みであったが、発表言語が日本側からの参加者は日本語で、韓国側からの参加者は韓国語である、という「暗黙知」が伝わっていなかったのである。実行委員会の不手際でもあるが、これもまた学会のみならず、社会における「国際化、多様化」の流れを改めて感じさせる場面であったといえよう。
一般セッションでは、韓国言論学会からは従来通りそれぞれのセッションで一件の研究報告があったのに対し、日本マスコミュニケーション学会からは、多くの報告が組まれることになった。時間的な制約なども考慮し、選考があっても良いという意見もあったが、一般・自由テーマとはいえ、本シンポジウムの趣旨に相応しく、優れた研究報告があったことを記しておきたい。 以上のように、本シンポジウムでは、大変充実した発表と討論が行われた。午前9時半から午後5時までの長丁場であったが、興味深い研究発表と鋭い討論が行われた。
最後に、前日に行われたウェルカムレセプションや当日の懇親のための晩餐会についても触れておきたい。いずれの会場も、韓国言論学会の誠意を感じることができるロケーションで、大変美味しい料理をご馳走になった。この紙面を借りて感謝申し上げたい。
来年は、本学会がホストとなり、第26回の日韓国際シンポジウムを開催する予定である。来年度のシンポジウムでは、国際化・多様化する学術交流のニーズに柔軟に応えるために、英語を原則的な使用言語としつつ、日本語および韓国語での報告も認めることを検討している。また、財政的にもより持続可能な形での学術交流ができることを期待している。その他、開催時期や懇親会のあり方などについても、同様の観点から発展的な検討を双方の学会で行うこととなった。引き続き、会員の皆様のご関心をお願いしたい。