6月5日、6日に日本マス・コミュニケーション学会2021年春季大会が開催されました。関西学院大学で集う予定であった本大会は、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からオンライン開催となりました。第37期理事会のもとでは昨春の試行を合わせて3回目のオンライン開催となった今回は、両日あわせて330名の会員・非会員の方々が参加登録され、盛況のうちに終えることができました。オンラインでの開催にすっかり慣れた感はありますが、全体的にスムーズな運営が実現されたのは登壇された方々のご協力はもちろんのこと、企画委員会の先生方のご尽力の賜物であったと思います。ご参加くださったみなさま、本当にお疲れさまでした!
本大会でも若手会員に大会レポーターとしての参加をお願いし、それぞれの視点で全体を俯瞰する記事を書いていただきました。大会レポーターを務めてくださった、青山学院大学の石川ルジラットさんと東京大学大学院の柳ジミンさんに改めて感謝しますとともに、取材にご協力いただいたみなさまにも御礼申し上げます。
【春季大会初日(6月5日)】
午前の部は、個人・共同研究発2つとワークショップ3つで始まりました。私はワークショップ2に参加。NHKが1985年より5年ごとに実施してきた「日本人とテレビ」調査は昨年より「全国メディア意識世論調査」という毎年の調査に変わったそうで、その最新の結果が紹介されるとともに、メディア選択及びテレビと動画の立ち位置の変遷についての議論が行われました。本学会が日本メディア学会と改名するように、質疑応答からは、従来の「テレビ」だけでは現在のメディア環境を語り切れない、という共通の問題意識を誰もが持っていることが感じられました。
「分断」の時代をテーマとした午後のシンポジウムでは、実践的に社会運動に取り組まれている登壇者の方々が、分断時代の研究者としてメディアに出ている体験や、活動家・教育家としてどのような影響・反響があるかについて語られました。Google Formを活用したことでたくさん質問と意見が集まりました。特に登壇者が教壇に上がる際の言動の質疑が印象に残りました。緊急事態宣言中のオンライン開催となりましたが、やはり一年間経ったこともあり、全体的に発表者も参加者もZoomに慣れた様子で戸惑いがあまり見られませんでした。(石川さん)
コロナ禍も2年目となり、オンラインでの学会開催が当たり前になりつつあります。Zoomを利用し開催された今回の春季大会にも、朝自宅でパソコンを立ち上げ、リンクをクリックするだけで大会の場に参加することができました。
初日の午前は、個人・共同研究発表2に参加しました。米中の比較研究から、韓国の徴兵に関する研究、植民地朝鮮の研究まで、さまざまに国際研究を行う方々の発表が行われ、質疑応答も盛り上がりました。午後は学会の名称変更を決める総会を挟み、この日唯一のセッションであったシンポジウム1。「『分断』の時代のメディア研究」というテーマのもと、ジェンダーや政治的スタンスなど、さまざまな要因による分断が深刻化しているとの問題提起に続き、熱い討論が繰り広げられました。150人以上が参加されましたが、2時間があっという間に過ぎてしまう濃密な内容でした。
途中で音声が途切れたり、映像がとまったりする機材トラブルのハプニングもありましたが、オンラインならではの臨場感が出ていました。チャットやGoogle Formを使って質問を受け付け、円滑かつ効率的な質疑応答ができたのもオンライン開催のメリットだと思いました。(柳さん)
【春季大会二日目(6月6日)】
大会二日目はスパルタな一日でした。午前に参加したワークショップ4では、コロナ禍の一年間を振り返り、政治・科学・報道の関係を分析し、ジャーナリズムのあり方が議論されました。報道関係者が多く参加されていたようで、報道の現場に関する質問や討論が多かったです。
昼には本学会唯一のポスターセッション。環境に対する世論調査結果の報道を分析した報告でした。3.11以降、同類の世論調査が実施されなくなったと伺い、興味深かったです。オンラインでは対面のポスターセッションのように参加者が通りすがるわけではありませんが、発表者の明治大学の永井健太郎さんに感想を伺うと「相手の顔が見えないのでちょっとやりにくかった」が「質問も多かったのでやって良かった」と話されました。
午後は個人・共同研究発表4で4名の発表を聞きました。『ゼクシィ』の機能転換をはじめ、ツイッターの議題設定機能、首相キュー、インターネットの選択性と、テーマは異なるものの、対象はインターネットに関係した量的な研究でした。最後のシンポジウム2はSNSから生まれた「差別」についてでした。登壇者から豊富な知識・フレームワークを学ばせていただき、私の質問も取り上げていただきました。オンライン開催でありながらも、とても充実した二日間でした。(石川さん)
大会二日目は、午前のワークショップから最後のシンポジウム2までフルに参加し、とても濃い1日でした。午前に参加したワークショップ6では、子どもに対するメディアの影響について、主にテレビCMを中心に報告され、熱い討論が繰り広げられました。日本の実態が海外の事例との比較で論じられ、とても興味深い内容でした。
午後は、ポスターセッションとワークショップ7が続き、どちらも質疑応答が活発で、議論が盛り上がりました。最後のシンポジウム2では、SNS時代ならではの「差別」を促すようなメディア的構造が議論されました。SNSに代表されるデジタルメディア時代を生きる難しさや、研究者としての問題意識などについて考えさせられました。前日同様150人を超える参加がありました。
シンポジウム2に登壇されたケイン樹里安さんは、「発表はZoom、質疑応答はGoogle Formという形式が非常に良かった」一方で、「終わったあとに立ち話ができないことはどうしても悔やまれる」と、オンライン開催固有の難しさを述べられました。オンラインによる初めての大会参加でしたが、とても有意義な2日間でした。(柳さん)
レポート・写真 石川ルジラット(青山学院大学)
柳 志旼(東京大学大学院博士課程)
編集・構成: 第37 期事務局幹事 神谷説子(東京大学)