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- 日 時:2022年2月13日(日) 午後2時から4時半まで
- 方 法:ZOOMを用いたオンライン研究会
- 報告者:辻井敦大(立命館大学)、遠藤みゆき(東京都写真美術館)、日高良祐(東京都立大学)
- 討論者:土橋臣吾(法政大学)
- 司 会:大久保遼(明治学院大学)
- 企画趣旨
近年、メディアの物質性(materiality)に焦点を当てる研究が注目を集めている。もちろん、これまでのメディア研究においても物質性は重要な概念だったと言えるだろう。マーシャル・マクルーハンはメディアが伝達する内容ではなく伝達を可能にする形式の物質的な特性に目を向けるよう注意を促した。フリードリヒ・キットラーはコンピュータ文化を規定するハードウェアの物質的な特徴を分析する必要があると論じた。これに対し、近年の物質性への注目は、個々のメディアや装置を構成する様々なモノや素材に対して繊細な分析を加えることで、これまでとは異なる研究領域を開拓しつつある。いわばメディアやメディア文化を、「素材」へと「分解」することによって、分析単位を変え、製造や加工、販売や流通、文化や実践を今までとは異なる文脈に置き直しているのだ。
本研究会では、梅田拓也・近藤和都・新倉貴仁編著『技術と文化のメディア論』(ナカニシヤ出版、2022年)、とりわけ「第Ⅰ部 マテリアル」の論考を出発点として、メディアの物質性について議論を深めたい。とくに、辻井敦大「墓石加工技術と変容と死にまつわる平等性」(第2章)、遠藤みゆき「写真は永遠か――「不朽写真」としての写真陶磁器」(第3章)、日高良祐「プラットフォームをハックする音楽――チップチューンにおけるゲームボーイ」(第5章)を取り上げ、各章の著者からの報告とそれに基づいた議論を行う。議論と通じて、物質性への新たな注目がどのような視点と研究領域を切り拓くか、その可能性を明らかにしたい。「素材と分解」を出発点に、新しいメディア研究の視座やメディア文化の分析手法について議論し、知見を共有する場にできれば幸いである。