2024年度秋季大会レポート 2024 Autumn Conference Report

10月26日(土)に日本メディア学会2024秋季大会がオンラインにて開催されました。コロナ禍以降春季大会は対面、秋季大会はオンラインという形が定着してから3年目となる今回は、282名という多くの方にご参加いただきました。本大会から新たなシステムも導入し、さらに快適な大会運営を試みましたがいかがでしたでしょうか。ご参加くださったみなさま、本当にありがとうございました!

本大会では、2名の博士課程の会員の方に大会レポーターとしてご協力いただき、それぞれの視点から全体を俯瞰する記事を執筆していただきました。大会レポーターを務めてくださった、法政大学大学院の余偉さんと関西大学大学院の惲麗莎さんに改めてお礼申し上げます。お二人の取材にご協力くださったみなさまにも感謝いたします。

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秋晴れで爽やかな季節に、メディア学会2024年秋季大会が開催されました。朝10時、多くの参加者が早々にZoomに集まりました。大会は一日のみでしたが、個人発表やワークショップなど、多様なプログラムが同時進行し、テーマも非常に豊富でした。参加者はZoomのチャットなどで質疑応答を行い、活発な意見交換をしました。

午前の部では、個人・共同研究発表Aに参加しました。このセッションでは、ジェンダーに関するテーマが多く取り上げられていました。発表者の多くが若手研究者であることが印象的でした。雑誌における女性イメージの変遷、性別役割分業の変化、SNS上でのジェンダー論争などに関する研究発表を行われ、メディアにおけるジェンダー問題への意識を高めることができた有意義な時間となりました。

昼休みのポスターセッションでは、4名の報告者が各自の研究計画を発表しました。Zoom上でそれぞれの発表ルームに移動することで、現実空間を歩いているような感覚を味わえました。

午後の個人共同発表Cでは、ソーシャルメディアやマス・メディアを題材に、様々な視点からの研究が発表され、議論が盛り上がりました。特に印象に残ったのは、松浦さとこさんによる「大学生記者のジャーナリズム観の変遷」に関する発表でした。かつての京大新聞と現在の大学新聞を比較して、約半世紀にわたる大学生記者のジャーナリズム観の変遷を示した研究でした。これにより、若者の政治観や価値観の長年にわたる変化を感じることもできました。(惲麗莎)

今回の秋季大会から新しいシステムが導入されて少し不安でしたが、「タイムテーブル」から各研究発表に簡単にアクセスできるようになり、各会場への移動が大変スムーズになったと感じました。また、ウェブサイト上でリアルタイムの参加人数が表示されており、一人でパソコンに向いているのではなく、多くの人々が揃って学会に参加しているイメージが想像できました。

個人・共同研究発表は、主に会場Bと会場Dに参加しました。ジェンダー、政治コミュニケーション、メディア利用だけではなく、大学生記者のジャーナリズム観、声優育成に関する参与観察、コロナ禍における自己効力感に関する地域研究など、興味深い発表が揃っていました。私も中国からの留学生なので、同じ留学生の方によるジェンダー研究は興味津々に拝見しました。

ワークショップは、主に陰謀論や英国の公共放送に関するセッションに参加しました。いずれも40人近くが同時に議論に参加していました。教室だった場合、ほぼ満員の状態で集まっていたと思います。ほかにも様々なワークショップがあり選択肢が多く、自分の研究関心に沿って選択できました。(余偉)

午後の国際シンポジウムも刺激的な内容でした。台湾の大統領選挙におけるソーシャルメディアの利用や香港デモにおける若者の大字報、偽情報対策などの研究から、ネット文化が政治に影響を与える可能性について論じました。遠隔でもこうした国際シンポジウムが実施できることはオンライン開催のメリットと言えるでしょう。

少し目は疲れましたが、一日中様々なメディア研究に出会うことができて非常に有意義な一日でした。オンライン開催のメリットも多く感じた一方で、さらなる改善点として、個人・共同研究発表とワークショップが異なる時間帯で行われると、さらに多くの発表を楽しめるかもしれないと思いました。これからの学会大会への参加も楽しみにしています。(余偉)

最後の国際シンポジウムでは、東アジアの政治やネット文化に関する議論が行われました。日本、台湾、韓国の学者が各地域の状況について紹介し、政治家がSNSを利用して若者を引きつけることや、韓国や香港での近年のムーブメント、政治のエンタメ化、エモーションに基づいた政治参加などについての議論も展開されました。これらの現象や議論は、現在の日本の若者が政治からますます遠ざかっている時代においては、非常に意義深いと考えさせられました。とても充実した有意義な一日になりました。(惲麗莎)

レポート・写真:余 偉(法政大学大学院)

惲 麗莎(関西大学大学院)

編集・構成:第39期事務局幹事 柳 志旼(東京大学大学院)