6月15日、16日に日本メディア学会2024年春季大会が東京・吉祥寺の成蹊大学で開催されました。コロナ禍以降、はじめてフル対面開催(シンポジウムのみハイブリッド開催)となった今回は、両日あわせて470名に近い会員・非会員の方々が参加登録され、過去最多参加者数を記録しながら、盛況裡に終えることができました。長らく中止していた懇親会も本大会から復活し、参加者の新たな交流を深める貴重な機会になったと思います。ご参加くださったみなさま、本当にありがとうございました!
本大会では、2名の博士課程の会員の方に大会レポーターとしての参加をお願いし、それぞれの視点で全体を俯瞰する記事を書いていただきました。大会レポーターを務めてくださった、東京大学大学院の朱子奇さんと立教大学大学院の小嶌真由香さんに改めてお礼申し上げます。お二人の取材にご協力くださったみなさまにも感謝いたします。
【春季大会1日目(6月15日)】
梅雨入り前の東京はとても気持ちのいい天気でした。2年ぶりに関東で開催された今回の大会の参加者は、とても多いと感じました。1日目の午前中、私が参加したワークショップ2では、フランス国立視聴覚研究所INAの取り組みに基づいて、放送関係者や研究者の間で活発的な議論が行われました。問題提起者の大髙崇さんから「思っていたより大勢の方に来ていただいて、質問も非常に多くて、手応えを感じました」と感想が寄せられました。
午後のシンポジウム会場はほぼ満席になり、会場の外で机や椅子が臨時に設置されました。話題提供者三人と討論者の二人はそれぞれの視点から旧ジャニーズにおける性暴力事件とメディア報道のあり方について議論しました。話題提供者の周東美材先生が提示してくださった「アメリカ」としてのジャニー喜多川という視点や討論者の林香里先生が提示してくださった放送産業におけるジェンダー問題という視点がとても印象的でした。旧ジャニーズ問題に対する関心度がとても高く、会場からは多くの質問が寄せられました。
シンポジウムの後、コロナ以降初めて懇親会が開催されました。懇親会では修士課程の院生を含めて、若い研究者が多いと感じました。また、参加者の間で活発的な交流が見られました。(朱子奇)
成蹊大学の受付ロビーは多くの人で賑わい、談笑する会員の姿があちこちで見られました。私が参加した午前の部の個人・共同研究発表2では、SNSにおける政治的話題の拡散について、インボイスをキーワードにしたXへの投稿分析結果に関する報告が行われました。今回が2回目の発表だという浦野智佳さんは「前回の発表はオンラインだったので、会場での対面発表は楽しい」とお話ししてくれました。
午後のシンポジウム1は対面とオンラインを併用したハイフレックス方式で実施され、ジャニーズにおける性加害問題を通じてメディアの報道姿勢や業界の在り方、産業構造問題など様々な視点から議論が交わされました。パネリストの林香里先生が「老若男女、こんなに多くの人が集まり嬉しい」とコメントされたように、会場となった広いフロアは満席となり追加の椅子が設置されるほどで、議題への関心の高さが窺えました。シンポジウム終了後も登壇者へ質問をするための待機列が途切れず、熱気に包まれた一日目は盛況のうちに幕を閉じました。(小嶌真由香)
【春季大会2日目(6月16日)】
大会2日目も幅広い分野からの大学院生や研究者が報告をしました。午前中の個人・共同研究発表4では外国にルーツをもつ若者のメディア利用や、台湾の選挙活動における「かわいい」記号の共有に関する報告が行われました。個人・共同研究発表5では人種の観点から女性誌のモデルの身体表象についての発表が行われました。質疑応答では会場から多くの質問が寄せられ、活発的な議論が行われました。
ポスターセッションでは、4人の発表者が参加しました。お昼休み中にも関わらず、ポスターの前に多くの参加者が発表者と積極的に議論している様子が見られました。発表者の朱富民さんから「多くの方々が私の研究に関心を持ってくださり、アドバイスもたくさんいただき、本当に嬉しいです!」と感想が寄せられました。
午後の個人・共同研究発表6では、報道ビザから国民国家とジャーナリズムについて考える報告や、風評被害における責任帰属の問題に関する報告が行われました。また、シンポジウム2では、デジタル時代におけるプラットフォームについて、労働やジェンダーなどの視点から議論が重ねられました。プラットフォームへの資本の集中によって生まれる新たな格差・性差・搾取などについて考えさせられました。とても充実で有意義な二日間でした。(朱子奇)
二日目も充実したプログラムが並び、各教室で盛んな往来が見られました。午前に訪れた個人・研究発表5では、新聞倫理に関して用いられた「新聞道」という言葉の変容について報告が行われ、質疑応答を含め活発な意見交換が行われました。昼のポスターセッションでは4枚の力作を前に発表者と質問者が身振り手振りを交えて熱い議論を繰り広げていました。絵本の原画展の変容と社会運動の関連について発表した山内椋子さんは、ポスター紙の素材や掲示の工夫とともに「見てくれる人がいて、その場で議論ができる」と対面ならではの面白さを語ってくれました。
午後のワークショップ8のテーマは学会活動の未来について。前準備としてロビーに設置された「学会研究活動が“ときめく”方法を考えよう」というパネルには30件以上のアイデアが寄せられ、議論に参加する方々の真剣な表情が印象的でした。最終プログラムのシンポジウム2ではプラットフォームの拡大を議題に資本、労働者、ジェンダーの観点から意見が交わされ、身近に及ぶ影響力の大きさについて考えさせられました。初めての学会参加となりましたが、二日間を通して新たな発見にあふれた時間を過ごすことができました。(小嶌真由香)
レポート・写真:朱 子奇(東京大学大学院)
小嶌真由香(立教大学大学院)
編集・構成:第39期事務局幹事 柳 志旼(東京大学大学院)