第39期研究会「グローバルな歴史表象、対抗軸としてのトランスナショナル」(理論研究部会)(8/2開催)

■日 時:2024年8月2日(金)13:00〜14:50

■場 所:オンライン

■司会・問題提起:長山 智香子(名古屋大学)

■討論者:玄 武岩(北海道大学)

■討論者:尹 芷汐(椙山女学園大学)

■企画趣旨:

 『歴史の執拗さ:映画、テレビ、近現代の事件』(The Persistence of History: Cinema, Television, and the Modern Event, 1996)の序文でビビアン・ソブチャックは、その当時顕著になりつつあった新しい歴史意識について記述し、メディアに表象された歴史の一部に自分もなるだろうという自己認識(“readiness for history”)が生まれているとした。歴史物語が消費のために商品化されることへの懸念とともに、人々が人種やジェンダーのイメージを批評して歴史表象のプロセスに参加していく可能性にも言及していた。

 それから約30年経った今、メディアのグローバル化とデジタル化、多文化主義とフェミニズムのポピュラー化、SNSの浸透などによって、ソブチャックが指摘した歴史のメディア化はさらに顕著かつ複雑になっている。その中で、玄武岩、金敬黙、李美淑、松井理恵編著『グローバルな物語の時代と歴史表象:「PACHINKOパチンコ」が紡ぐ植民地主義の記憶』(2024、青弓社)は、韓国系アメリカ人ミン・ジン・リーの小説を原作として在日コリアンの家族史を描いたAPPLE TVのドラマシリーズを手がかりに、国民国家の物語とは異なったグローバルな歴史表象の多層的な政治をあぶり出した。また、ドラマには表れなかった人々の記憶と社会関係も論じた。12章と8つのコラムからなるこの書が、グローバルな表象を批評しつつトランスナショナルな対抗軸を構成しているようにも読める。

 本研究会はここから得たインスピレーションに基づいて、「帝国主義や植⺠地主義の歴史を踏まえ、国や⺠族の枠組みを越えて⼈々を動かす物語(narrative, storytelling)にはどのような構成要素があるのか」、「それらの構成要素はどのような政治的緊張をはらむのか」という問いを出発点にしたい。ドラマ『パチンコ』の在日コリアン/コリアン・アメリカン/アジアン・アメリカンをめぐる表象の政治は、ジェンダーとセクシュアリティの観点からも示唆に富む。グローバル化のもとで継続・更新される⽀配と分断の構造に対して、物語はどのようなポテンシャルをもつのだろうか。先述書の共編著者である玄武岩先生と、『社会派ミステリー・ブーム−日中大衆化社会と〈事件の物語〉』(2024、花鳥社)を上梓された尹芷汐先生をお迎えし、討論していただく。

■申し込み方法:

参加を希望される方は下記URLから事前登録をお願いいたします。

https://forms.gle/afJ238kvgx5P1sdr6