■日 時:6月16日(金曜日)午後4時~6時
■場 所:東京工業大学大岡山キャンパス西9号館203号室+Zoomによるハイフレックス開催
■報告者:小平沙紀(東京大学大学院)、小埜功貴(東京工業大学大学院)
■討論者:辻泉(中央大学)
■司 会:北村匡平(東京工業大学)
■企画趣旨:
男性のジェンダー規範は現代、劇的に変化している。そのことによって従来の「男らしさ」とは異なる価値や美意識が見出され、逆に男性性の変質による「生きづらさ」も生み出されている。メンズリブ組織も時代とともに隆盛し、衰退してきた。近年のアイデンティティ・ポリティクスの盛り上がりの中で、メディア研究でもジェンダー/セクシュアリティを対象とする研究がいっそう増えているように感じられる。そこで本研究会では日本と韓国における男性性に関する事例についての報告を通じて議論を深めていきたい。
韓国男性の美意識は非常に高く、男性用化粧品国民一人当りの売上高は世界第一位を誇る。国内の男性向け美容産業の成長は著しく、市場規模は2010年からの10年間で約2倍にまで成長し、美容整形の男性患者も年々増加している。小平沙紀氏(東京大学大学院)の発表では、儒教規範に基づく家父長制および徴兵制など、歴史的に男性優位とマチズモが特徴とされてきた韓国社会において、それらと一見、矛盾するような韓国男性の活発な美容実践がどのような文脈により生成されてきたのかを明らかにする。とくに本発表では、近年、韓国において美容業界の新たなターゲット層として注目されている男性軍人の美容実践に着目し、インタビュー調査から明らかになった軍隊内の美容実践の実態と、軍隊で講読されている軍人雑誌『HIM』における美容整形外科・化粧品広告の考察を試みる。こうした考察により、現代韓国において軍人の身体がどのように眼差され美容実践が推し進められているのかを明らかにしたい。
メンズリブ(Men’s Lib, Men’s liberation)とは1960〜70年代の第2波フェミニズムのなかで台頭した女性解放運動[ウーマンリブ]から派生した、抑圧的な性規範としての男性性からの解放を目指す思想および運動のことを指す。日本では1990年代を中心に全国各地でこの思想に則った男性同士の対話コミュニティーが形成された。しかし、このメンズリブは2000年代には全国的に衰退の一途を辿り活動終了が相次いでしまう。既存の男性学・男性性研究はその原因として、男女平等に関する政策やそのような社会の動きに対する保守派によるバックラッシュや、運動を担っていた団塊世代からの若い世代への引き継ぎの失敗や両者における興味の差異、1990年代末から2000年代末までの経済成長によって男性性について振り返る動機が希薄化していったことを挙げている。けれども、この因果関係を結びつける根拠はまだ提示されておらず仮説の域を出ていない。小埜功貴氏(東京工業大学大学院)の報告では1990年代における主要メンズリブ組織「メンズリブ研究会」の発行する機関紙を用いて、活動の盛衰についての経緯や、組織への新規動員を阻むコミュニティー内部の閉鎖性や特殊性について分析する。
本研究会では、上記の二つの報告の後、若者文化とメディア、男性性に関する研究を進めてきた辻泉氏(中央大学)からコメントをいただき、メディア研究と男性学に関わるさまざまな知見を広げられるような研究会にしたいと思う。
■申し込み方法:
参加を希望される方は下記URLから事前登録をお願いいたします。
https://zoom.us/meeting/register/tJ0lc-iqqD8tGdPXgGpPlr08I4q18X28MogN