第38期第29回研究会「メディア地質学と未来の化石 デジタル文化の地層を採掘する(『メディア地質学』書評会)」(理論研究部会)(3/11開催)

■日 時:2023年3月11日(土)14:00~16:10
■場 所:オンライン(参加登録が必要です)
■報告者:太田純貴(鹿児島大学)
■討論者:今関裕太(江戸川大学)、梅田拓也(同志社女子大学)
■司 会:大久保遼(明治学院大学)

■企画趣旨:
近年、メディアと環境の循環的な関係に注目する新たな研究領域が開拓されつつある。もちろんこれまでにもメディア研究は、マーシャル・マクルーハンに代表されるように、日常生活にメディアが浸透し、環境化することがもたらす諸問題を扱ってきた。メディアが遍在する生活を人間にとっての環境や生態系になぞらえることは、「メディア・エコロジー」という言葉とともに、あるいはフェリックス・ガタリやマシュー・フラーによる重要な問題提起とともに、メディア研究の文脈ではある程度定着してきたと言えるだろう。

しかしながら、2010年代以降、人新世やニューマテリアリズム、ノンヒューマンといった言葉とともに問われつつあるのは、メディアと自然環境とのより内在的な連環であるように思われる。この領域では近年、The Marvelous Clouds (Peters 2015)、Signal Traffic (Parks and Starosielski 2015)、Digital Rubbish (Gabrys 2011)、Finite Media (Cubitt 2016)、Sustainable Media (Starosielski and Walker 2016)、Climatic Media (Furuhata 2022)といった重要な成果が相次いで発表されている。ユッシ・パリッカ『メディア地質学:ごみ・鉱物・テクノロジーから人新世のメディア環境を考える』(太田純貴訳、フィルムアート社、2023年)もまたこうした潮流と確かに軌を一にするものであり、「地質学」をキーワードに、メディアという概念やメディア研究の課題自体を再設定することを試みる挑戦的な書物と言えるだろう。

しかしこうした視点の転換は新しいだけではない。スマートフォンに含まれる鉱物や電子廃棄物の山から、現代のデジタル文化に隠された資源、汚染、労働の問題を剔出していくパリッカの議論は、パサージュをモダニティの化石が埋もれた洞窟になぞらえたヴァルター・ベンヤミンによる歴史の瓦礫の発掘作業とも共鳴している。いわばメディアの地質学とは、デジタル文化と情報社会の構成要素とその残骸の分析であり、次第に朽ち果て廃墟になっていく未来の化石の考古学でもあるのだ。そして、それはまた、地質学的なスケールの時間のなかで、文学史やメディアアートを読み直すための方法でもある。

本研究会では、『メディア地質学』を出発点に、この書物とパリッカの視点が開拓する新しいメディア研究の可能性について検討を行う。まず訳者の太田純貴氏(鹿児島大学)から『メディア地質学』とパリッカのメディア理論について紹介いただいた上で、本書を出発点にいくつかの論点を提示いただく。次に今関裕太氏(江戸川大学)と梅田拓也氏(同志社女子大学)から、本書の議論が今後のメディア理論や人文学、文化研究に対して持つ可能性と課題について報告いただき、会場との議論に繋げる予定である。

■参加登録:
参加を希望される方は、下記のURLより事前登録をお願いします。
https://zoom.us/meeting/register/tJwodumrqDkjG9EYqUH_gbieraPuspiLftPl