第38期第26回研究会「大尾侑子著『地下出版のメディア史 エロ・グロ、珍書屋、教養主義』(慶應義塾大学出版会、2022年)書評会」(メディア文化研究部会)(1/22開催)

■日 時:1月22日(日) 午後2時から4時まで
■ 方 法:Zoomを用いたオンライン開催
■ 書評者:新藤雄介(福島大学)、品治佑吉(立教大学)
■ 応答者:大尾侑子(東京経済大学)
■ 司 会:近藤和都(大妻女子大学)
■ 企画趣旨:
日本のメディア文化研究において、出版物の内容や形式に焦点を当てた研究群は重要な位置を占めている。それらは、特定の雑誌を取り上げてその内容や形式の通時的変遷を辿ったり、書籍の判型が標準化され書店のなかに組み込まれる過程を論じたり、雑誌や書籍をめぐる読者の経験や共同性に焦点を当てたりすることで、出版物が生み出す文化の多層性を明らかにしてきた。その過程でさまざまな視座や概念が検討され、それらはメディア文化研究の共有財産となっている。

本書評会で取り上げる大尾侑子氏の『地下出版のメディア史――エロ・グロ、珍書屋、教養主義』(慶應大学出版会、2022年)はこうした蓄積を踏まえつつも、それらをさらに発展・展開させることで、メディア文化研究が取り組むべき新たな道筋を照らし出している。本書が論じるのは教養主義ではなく「反教養主義(的態度に貫かれたオルタナティブな教養主義の可能性)」であり、岩波文化でも講談社文化でもなくそれらに寄生しながら翻弄する「軟派出版」であり、書店で公刊流通する本ではなく、半合法的な秘密出版として会員制頒布された「地下出版」であり、雑誌や書籍の内容(だけ)ではなく、装幀や判型などの「形式」、そして内容見本や刊行案内、会員通信、正誤表、書き込みなどの「パラテクスト」である。本書の問題設定は、これまでのメディア文化研究が見逃してきた領域を切り開き、また従来の視座や概念が何を前提としてきたのかを問いただしている。そこで本書を通じて、出版文化研究の展望を議論すると同時に、広くメディア文化研究で取り組むべき課題について考えていきたい。

評者には、近代日本の読書装置について周縁化されてきた事例を取り上げながら研究されてきた新藤雄介氏と、清水幾太郎を対象として思想史とメディア論を交えながら議論されてきた品治佑吉氏をお招きする。それぞれの専門の立場から本書を評していただき、その後、著者、参加者で討論を行うことで、上記の課題に対する議論を深めたい。

■ 申込み方法
参加を希望される方は下記URLから事前登録をお願いいたします。

https://us02web.zoom.us/meeting/register/tZIpceGuqTMoG9GTaQPgGJAwGGI0jty1Njhu